マイホームを建てる際や駐車場を設置する際は、歩道の切り下げ工事が必要になる場合があります。中には、費用を抑えるために「自分でDIYしよう」と考える方もいますが、切り下げ工事には面倒な申請手続きや工事に専門的なスキルが必要です。

当記事では、歩道の切り下げ工事にかかる費用はどのくらいなのかという点や、費用を抑えるにはどうすればよいのかといった点を解説します。また、切り下げ工事の申請方法や注意点についても併せて紹介します。

 

1.歩道の切り下げ工事はなぜ必要?

歩道の切り下げ工事とは、文字通り歩道部分を低く切り下げて、段差を解消する工事のことです。歩道は、歩行者が安全に通行できるスペースとして整備されています。そのため、車道と歩道の境界は縁石で区切られており、車の侵入を遮るようにできています。

新居を構えたり、駐車場を設置したりする際には、車両の出入りができるように車道と歩道との段差をなくす切り下げ工事が不可欠です。

歩道の切り下げ工事をしなかった場合、段差がある車両出入口を車体が通過しなければなりません。段差がある出入口は車のタイヤが消耗したり、車体の下が傷ついたりなどのリスクがあるため注意しましょう。

 

1-1.段差プレートや乗り入れブロックは違法のため注意

切り下げ工事を行わず、段差プレートや乗り入れブロックを道路に設置することは、道路法に違反します。

段差プレートや乗り入れブロックは、道路を走行する自転車やバイクが転倒事故を起こす恐れがあり危険です。また、歩行者がつまずいたり、雨水の排水を妨げて道路が冠水したりなどのさまざまなリスクがあり、プレートやブロックの設置は禁止されています。

実際に大阪府堺市で、ミニバイクが段差解消ブロックに接触して転倒し、車にひかれて死亡する事故が発生しています。国道に面した飲食店によって設置された駐車場前の段差解消ブロックが事故の原因と判断され、飲食店経営者は道路交通法違反で書類送検・略式起訴されました。

設置者が法的に処罰を受ける可能性が高いため、住宅・駐車場と道路の段差を解消するには、歩道の切り下げ工事が不可欠です。

出典:兵庫県「道路に段差解消(乗り入れ)ブロック等を置かないでください!」

 

2.歩道の切り下げ工事は自分で対応できる?

切り下げ工事は、自治体への申請さえ通れば個人で工事を行えます。

しかし、申請には詳細な工事図面が必要です。図面は専門知識がないと作成できないため、素人では作成が難しいと言えるでしょう。また、申請手続きも複雑で、申請者個人では対応しきれないケースが少なくありません。

仮に自治体への申請が通ったとしても、工事自体が大変になります。切り下げ工事は、単純に歩道端のブロックを変えるだけではありません。これまで車の出入りがなかった場所を車が乗り入れできるようにするため、歩道側の路盤を強固なものに変更する必要があります。

段差を削るだけの簡単な内容ではなく、専門知識のない個人では工事できないと考えておきましょう。

 

2-1.歩道の切り下げ工事の申請に必要な書類と流れ

歩道切り下げ工事をする際には、道路法第24条に基づく「道路工事施行承認申請書」を市町村の道路管理者に提出し、承認を得る必要があります。

道路の切り下げ工事の申請に必要な書類は,
以下の通りです。

  • 道路工事施行承認申請書
  • 申請理由書
  • 位置図
  • 平面図(現状図と計画図の両方)
  • 正面図(現状図と計画図の両方)
  • 断面図(現状図と計画図の両方)
  • 現状写真(左側・正面・右側)
  • 交通安全対策図
  • 工事仕様図
  • 求積表
  • 誓約書
  • 同意書

大型車の出入りがある場合は、上記の書類と併せて「車両軌跡図」の提出が必要です。

次に切り下げ工事が完了するまでの全体の流れを解説します。

1 役所担当者との打合せ
2 工事図面の作成
3 道路管理者への申請手続き
4 警察署への道路使用許可の申請
5 歩道切り下げ工事着手
6 工事完了検査と各役所への必要書類提出

切り下げ工事の申請をしてから、承認までは約3週間の期間がかかります。

また、切り下げ工事の着工には道路を封鎖する必要があるため、警察署で道路使用許可申請を行わなければなりません。道路使用許可申請は、承認まで約1週間かかります。

申請から承認までの期間が開くことを念頭において、工事計画を立てましょう。

出典:関東地方整備局「歩道切り下げの申請について」

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3.歩道の切り下げ工事にかかる費用は自己負担

切り下げ工事をする場合、行政が管理する道路でも工事にかかる費用は、全額自己負担となります。切り上げ工事は個人の用途を目的とした工事になるため、自治体から補助が出ることはありません。

歩道の切り下げ工事の費用相場は、約30~100万円です。また、切り下げ工事の申請を業者に依頼する場合は、工事費用とは別に申請費用が5万円ほどかかります。

工事費用は、歩道の種類や障害物の有無、舗装の有無などによって大きく異なります。アスファルトで作られている歩道と、特殊なブロックや自然石などで作られている歩道であれば、後者の工事費が高くなる傾向です。

マンホールや雨水取付管、街路樹などの障害物が道路にあると、障害物を撤去・移設しなければならず、さらに費用がかかる可能性があります。

 

4.歩道の切り下げ工事にかかる費用を抑える方法

歩道の切り下げ工事は自費で行う必要があるため、できるだけ費用負担を抑えたいと考えている方は多いでしょう。歩道の切り下げ工事費用を抑える3つのコツは、以下の通りです。

  • 複数業者に見積もりを取ってもらう
  • 切り下げ工事専門の業者に依頼する
  • 過去の施工実績・事例が豊富な業者を選ぶ

それぞれのコツについて詳しく解説します。

 

4-1.複数業者に見積もりを取ってもらう

工事費用が適正価格かどうか確認するためには、複数の土木工事会社から見積もりを取ることが大切です。複数の業者の見積もりを比較すると、工事費用を安く抑えられる可能性が高くなります。

見積もりは合計金額だけでなく、記載されている内容のチェックが大切です。内容を確認し、ほかの業者よりも金額が高い項目がある場合、外注で工事をする可能性があります。外注工事は、見積もりの中に仲介手数料が含まれており、工事費用が高額になるケースも少なくありません。

見積もりを依頼すると、詳細を記載せずに一式表記の見積書を提示する業者もあります。一式表記の見積書では詳しい工事内容が分からず、後から追加工事が発生する可能性があるため注意しましょう。

 

4-2.切り下げ工事専門の業者に依頼する

切り下げ工事専門の業者へ依頼するメリットは、適正価格での工事を実現できる点です。切り下げ工事を専門的に行っている業者であれば、工事のノウハウが蓄積されているため、適切な人手でスピーディに対応してもらえます。

切り下げ工事専門外の業者に依頼すると工事が外注になる可能性が高く、費用が割高になる場合がほとんどです。できるだけ金銭的負担を抑えたいなら、外注ではなく自社施工で対応してもらえる切り上げ工事専門業者への依頼をおすすめします。

 

4-3.過去の施工実績・事例が豊富な業者を選ぶ

過去の施工実績や事例が豊富な業者であれば、費用対効果の高さを期待できます。切り下げ工事に慣れており手際よく工事を進行できるため、工数が短い分費用を抑えられるでしょう。

また、多くの実績がある業者での工事は、仕上がりのよさにもつながります。過去の施工実績や事例については、自社ホームページで公開している業者が大半です。「理想的な仕上がりの事例はあるか、丁寧な仕事ぶりが伺えるか」などを確認し、気になる業者があれば見積もりも含めて相談してみるとよいでしょう。

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まとめ

歩道の切り下げ工事は自分でも行えますが、面倒な申請手続きと専門知識をもって工事を行う必要があるため、素人の場合は自分で対応するのは難しいと言えます。切り下げ工事の専門業者に依頼すれば、申請手続きから施工まで一貫して対応してもらうことが可能です。

歩道の切り下げ工事の費用相場は、約30万~100万円程度となっています。歩道の状態によって実際の費用は異なり、工事にかかる費用は全額自己負担です。決して安い出費ではないため、費用面・クオリティ面で安心できる専門業者をしっかりと見定めた上で依頼しましょう。

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