駐車場経営をしている方やこれから始めようと考えている方の中には、「収入を得た場合に確定申告は必要なのか」気になる方もいるでしょう。基本的に、給与以外の所得が20万円を超える会社員や、所得金額の合計が年間48万円を超える個人事業主は確定申告をする必要があります。

当記事では、所得税の計算方法や確定申告が必要・不要なケース、確定申告における所得区分、駐車場収入の確定申告でおすすめの青色申告について紹介します。駐車場経営の確定申告における基本知識や注意点が知りたい方は必見です。

 

1.駐車場経営で得た収入は確定申告が必要?

確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの年間所得に対する所得税額を計算し、税務署に申告することで税金額を確定させる手続きのことを言います。

出典:国税庁「No.2020 確定申告」

駐車場経営で収入を得ている場合は確定申告が必要かどうか正しく判断し、申告漏れがないようにすることが大切です。

ここでは所得税の計算方法や、駐車場業で確定申告が必要なケースと不要なケースについて解説します。

 

1-1.所得税の計算方法

所得税の計算は下記の計算式で求められます。

【所得税の計算式】

所得税=課税所得金額×税率-控除額

課税所得金額は、1年間の総所得から基礎控除や扶養控除、医療費控除などの各種所得控除を差し引いて求めます。

出典:国税庁「所得税のしくみ」

このとき、所得税の計算においては「所得=収入」ではないことに注意が必要です。駐車場経営の場合は、収入から維持管理費といった必要経費を引いた金額が所得額となり、課税対象となります。

税率は「累進課税制度」が採用されているため、所得が増えれば増えるほど税率が上がる仕組みになっています。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

※ 平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告・納付することとなります。

引用:国税庁「No.2260 所得税の税率」引用日2024/02/27

上記の表をもとに所得税を計算すると、次のようになります。

【駐車場経営の所得が500万円の場合】

5,000,000円×0.2-427,500円=572,500円

所得税計算の際は、所得を正確に把握して適した税率と控除額を確認しましょう。

 

1-2.所得が20万円以下の場合は原則確定申告が不要

会社員が副業として駐車場運営をしている場合、所得額が20万円以下であれば税務署への確定申告は原則必要ありません。国税庁によると、確定申告が不要になる具体的な要件は次の通りです。

給与の収入金額が2,000万円以下で、かつ、給与を1か所から受けていて、その給与の全部について源泉徴収される人で給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下である人等、一定の場合には確定申告をしなくてもよいことになっています。

引用:国税庁「No.2020 確定申告」引用日2024/02/27

ただし、住民税に関しては各自治体に申告する必要があります。通常、確定申告をすれば税務署が自治体に所得に関するデータを送信します。しかし、確定申告をしない場合はデータの送信が行われないため、自治体は所得を正確に把握できません。そのため、居住している市区町村役所に対して住民税の申告を行うことが求められます。

 

1-3.確定申告が必要なケース

会社員が副業として給与以外の所得が20万円以上ある場合や、事業所を含む所得金額の合計が年間48万円以上の個人事業主の場合は確定申告が必要です。

出典:国税庁「確定申告が必要な方」

出典:国税庁「No.1199 基礎控除」

会社員が副業として駐車場経営をして、所得合計が20万円以上になる場合は確定申告で税金額を決めなければなりません。たとえば、会社から支払われる給与が500万円、駐車場経営で発生した所得が30万円であれば、確定申告の義務が発生します。

また、駐車場経営の所得が20万円未満であっても、給与が2,000万円を超える場合は確定申告が必要です。

 

2.駐車場経営による収入は確定申告ではどの所得区分になる?

所得には以下のような10種類の所得区分があり、所得の種類によって必要経費の範囲や所得の計算方法が決められています。

1 利子所得

2 配当所得

3 不動産所得

4 事業所得

5 給与所得

6 退職所得

7 山林所得

8 譲渡所得

9 一時所得

10 雑所得

引用:国税庁「所得税のしくみ」引用日2024/02/27

駐車場経営の所得は、基本的に次の3種類に分類されます。

  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 雑所得

ここでは、所得区分の分け方やそれぞれの所得の特徴について解説します。

 

2-1.事業所得

事業を営んで発生した所得を「事業所得」と言います。駐車場所得が事業所得であるか判断するポイントは、国税庁が定める「自己の責任において他人の物を保管する」にあてはまるか否かです。

出典:国税庁「法第26条《不動産所得》関係」

おもに下記のような条件を満たしている場合は「事業所得」とみなされます。

  • 土地所有者が自動精算機といった管理設備を購入している
  • 駐車場で起きた盗難や事故に対する管理責任を土地所有者が負っている
  • 管理人が常駐している
    など

明確な基準が定められているわけではないため、実態に即して総合的に判断することが求められます。

 

2-2.不動産所得

土地や建物の貸付で得る所得を「不動産所得」と言い、駐車場経営で発生する所得の多くは不動産所得です。不動産所得と判断される例として、次のようなものが挙げられます。

  • 月極駐車場
  • 一括借り上げ方式のコインパーキング
  • 駐車場における事業リスクを駐車場管理会社が負っている場合
  • 駐車場設備を駐車場管理会社が持ち込んでいる場合
  • 駐車場の入り口に規制がなく管理者もいない場合
    など

駐車場の管理を行わず、駐車スペースを貸し出しているのみというケースの多くは不動産所得と位置づけられます。事業所得と異なり、不動産所得の場合は盗難や事故などのトラブルの責任を、土地所有者自身が負わない点が大きな特徴です。

 

2-3.雑所得

駐車場台数が50台未満の規模が小さい駐車場である場合や、駐車場経営の収入以外に主たる収入があると、雑所得に分類される可能性があります。雑所得とは、事業所得や不動産所得にあてはまらない所得のことです。

雑所得は事業所得と区別しにくいことがありますが、駐車場の規模や収入を包括的に見て事業規模であれば事業所得と判断できます。

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3.駐車場収入の確定申告は青色申告がおすすめ

確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。駐車場の運営で得た収入が事業所得または不動産所得に該当する場合、税金面でさまざまな優遇措置がある青色申告がおすすめです。

ここでは、青色申告と白色申告の違いや、青色申告で得られる特典と注意点について解説します。

 

3-1.青色申告と白色申告の違い

青色申告と白色申告のおもな違いは次の通りです。

  青色申告 白色申告
事前申請 必要 不要
記帳方式 複式簿記 単式簿記
必要書類
  • 確定申告書
  • 青色申告決算書
  • 控除書類
  • 確定申告書
  • 収支決算書
  • 控除書類

青色申告をしたい場合は、事前に税務署に申請書を提出して承認を得る必要があります。また、青色申告は帳簿が複雑で提出書類が多く、手続きが煩雑であるという点も白色申告との大きな違いです。

 

3-2.青色申告の特典

青色申告には、特典として次のようなものがあります。

  1. 所得金額から最高65万円を差し引くことができます。
  2. 配偶者等に支払う給与を必要経費に算入することができます。
  3. 赤字を前年や翌年の所得金額から差し引くことができます。

引用:税務署「青色申告」引用日2024/02/27

青色申告では、最高65万円の特別控除を受けることが可能です。所得税は所得金額に税率をかけて算出するため、特別控除は高い節税効果が期待できます。ただし、最高65万円の控除を受けるには、e-Taxによる電子申告または電子帳簿の備え付けが必要です。郵送や窓口での手続きでは控除額は最高で55万円になることに注意しましょう。また、確定申告期限が過ぎた場合の控除額は、最高で10万円となります。

そのほか、配偶者に支払う給与を必要経費として収入から差し引きできたり、赤字を前年や翌年以降の所得金額と相殺できたりする特典もあります。青色申告は税金を安く抑えられることが大きなメリットと言えるでしょう。

 

3-3.青色申告で注意するポイント

青色申告で注意すべき点は次の3つです。

・事前に申請する必要がある

事前に申請しないと白色申告しかできないため、青色申告承認申請書を期限内に提出しましょう。また、個人で駐車場経営をする場合は、個人事業の開廃業等届出書も必要になります。

・雑所得では青色申告ができない

駐車場経営で得た収入が事業所得や不動産所得とみなされず、雑所得に分類される場合は青色申告の対象外です。どの所得区分になるか判断が難しい場合は、事前に税務署に確認することをおすすめします。

・複式簿記で記帳する

青色申告では原則的に複式簿記が必要です。単式簿記と違い、複式簿記は備えるべき帳簿の数が多く、書き方も専門的になります。特に初めて複式簿記を行う場合は、手間と時間がかかるため事前準備が大切です。

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まとめ

駐車場経営で得た収入は、条件によって確定申告の有無が異なります。会社員が副業として駐車場経営をしている場合は、所得額が20万円以下であれば税務署への確定申告は原則必要ありません。個人事業主として駐車場経営をする場合は、事業所を含む所得金額の合計が年間48万円以下であれば確定申告が不要です。

駐車場経営による収入は、確定申告では基本的に「事業所得」「不動産所得」「雑所得」に分類されます。駐車場の規模や収入を包括的に見て事業規模であれば事業所得と判断できます。

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