駐車場経営に保険は必要？考えられるリスクや事例についてもご紹介

駐車場経営は、安定的な収益源として近年注目を集めています。
しかし、一見安全そうに見える駐車場経営にも、実は様々なリスクが潜んでいます。

もし、駐車場に設置した看板が強風で落下し、隣の敷地に被害を与えてしまったら？
利用者が駐車中に車をぶつけて、高額な修理費用を請求されたら？
夜間に忍び込まれた泥棒に現金や設備を盗まれてしまったら？

こうした想定外のトラブルは、駐車場経営者にとって大きな痛手となります。
場合によっては、事業継続が困難になる可能性すらあります。

このようなリスクを事前にしっかりと備え、万が一の事態にも安心して事業を運営するために、駐車場経営には保険が欠かせません。

本記事では、駐車場経営における代表的なリスクと、それらを補償する保険について詳しく解説します。
実際の保険適用事例もご紹介することで、具体的なイメージを掴んでいただけると思います。

駐車場経営において考えられるリスク

駐車場経営は、一見手軽に始められるように見えますが、実は様々なリスクが潜んでいます。
これらのリスクを事前に理解し、対策を講じておくことが、成功への近道と言えるでしょう。

1. 利用者トラブル

駐車場経営における悩みの種といえば、利用者によるトラブルです。
特に、料金関連のトラブルは深刻で、月極駐車場では未払い・滞納が、コインパーキングでは駐車券紛失や料金表示の不明瞭さについてのトラブルが頻発します。
さらに、敷地出入口が狭い駐車場では、入出庫時の車同士の接触事故や、設備・フェンスへの衝突による物損事故も多発します。

これらの事故は利用者の過失であっても、駐車場管理が不十分と判断されると経営者の責任が問われる可能性があるため、十分な注意が必要です。
また、物損事故で設備が破損した場合、修理期間中は駐車場運営が停止し、収入が途絶えてしまうという痛手も受けます。

2. 外部トラブル

駐車場経営は、利用者とのトラブルだけでなく、周辺住民や歩行者など外部との間でも摩擦が生じる可能性があります。
特に多いのが、近隣住民からの苦情です。
「駐車中の車の音や排気ガスが気になる」「24時間開放で治安が悪い」など、様々な意見が寄せられます。

中には理不尽なクレームも含まれますが、放置すれば利用者離れやイメージダウンにつながるため、真摯に対応することが求められます。
さらに、駐車場の特性上、ゴミの不法投棄や違法駐車などの問題も発生しやすいという課題があります。
放置すれば景観を損ない、利用者や周辺住民の不快感を与えてしまうだけでなく、悪臭や害虫発生の原因にもなりかねません。

3. 設備トラブル

駐車場経営において、設備の不具合や故障は大きな問題となります。
利用者との接触事故による修理中断はもちろん、自然災害による被害も経営を直撃します。

近年増加している急激な大雨や河川の氾濫は、駐車場経営者にとっても深刻な脅威です。
特に、川沿いの立地では、洪水による機械設備の水没被害が懸念されます。
設備が水没すれば、復旧までに多額の費用と時間がかかり、営業再開もままならない状況に陥ります。

さらに、機械設備以外にも、フェンスの倒壊や看板の落下など、思わぬ事故が発生する可能性もあります。
このような事故は、周囲の人や物に被害を与え、損害賠償責任を問われる事態にもつながりかねません。

駐車場経営に関する保険

駐車場経営において、事故やトラブルは避けられないものです。
精算機当て逃げ、駐車場壁破損、看板落下による車傷など、様々なケースが考えられます。
状況によっては、運営者側が責任を負う場合もあり、高額な修繕費や賠償金が必要となることも想定されます。

そこで今回は、駐車場経営を支える3つの保険について、保険別の補償内容を徹底解説します。

1. 施設賠償責任保険

駐車場経営において、万が一のトラブルに備えることは非常に重要です。
そんな時に役立つのが、施設賠償責任保険です。

時間貸し駐車場（コインパーキング）や月極駐車場を問わず、駐車場経営者に必須の保険と言えるでしょう。
この保険では、駐車場設備の不備や構造上の欠陥によって、利用者や利用者の車両、近隣住民に損害を与えてしまった場合に、その損害金を補償してくれます。

駐車場経営では、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。

これらの場合、修理代や治療費などの損害賠償金が高額になることが考えられます。
せっかくの収益が補償費用で吹き飛んでしまい、駐車場経営が立ち行かなくなるという最悪の事態も想定されます。

施設賠償責任保険に加入しておけば、このような万が一の事態にも安心です。
時間貸し駐車場（コインパーキング）や月極駐車場のどちらを経営する場合でも、保険の対象となります。

補償対象となる施設

• 駐車場全体
• 料金看板
• 駐車場の舗装
• 駐車場内にあるマンホール
• 駐車場設備

上記以外にも、駐車場に設置されているあらゆるものが補償対象となります。

施設賠償責任保険で補償されないもの

施設賠償責任保険は、あくまでも利用者や利用者の車、近隣住民への補償に特化した保険です。
施設自体の修繕費用は補償されませんので、ご注意ください。

また、以下の理由による損害賠償責任も補償対象外となります。

• 故意による損害：故意に損害を与えた場合
• 自然災害による損害：地震、噴火、洪水、津波、高潮などによる損害
• 施設の修繕・改築による損害：施設の新築、修理、改造、取り壊しなどの工事に起因する損害
• 管理・安全性の不備による損害：駐車場の管理や安全性の維持に関して、運営者側に不備があった場合

2. 動産総合保険

駐車場経営において、駐車場機器や現金などの損害は大きな痛手となります。
そんな時に役立つのが、動産総合保険です。

動産総合保険は、駐車場機器などの動産を対象とした保険であり、不測かつ突発的な事故によって発生した損害を補償してくれます。

動産総合保険で補償されるもの

具体的には、以下の損害が補償されます。

• 駐車場機器の破損・盗難：精算機、ゲート機、監視カメラなどの破損や盗難
• 精算機内の現金の盗難：窃盗や強盗による精算機内のお金の盗難
• その他動産の損害：上記以外にも、駐車場内に設置されている看板やフェンスなどの損害

施設賠償責任保険で補償されないもの

施設賠償責任保険は、あくまでも利用者や利用者の車、近隣住民への補償に特化した保険です。
施設自体の修繕費用は補償されませんので、ご注意ください。

また、以下の理由による損害賠償責任も補償対象外となります。

• 故意による損害：故意に損害を与えた場合
• 自然災害による損害：地震、噴火、洪水、津波、高潮などによる損害
• 施設の修繕・改築による損害：施設の新築、修理、改造、取り壊しなどの工事に起因する損害
• 管理・安全性の不備による損害：駐車場の管理や安全性の維持に関して、運営者側に不備があった場合

3. 火災保険

駐車場経営において、火災保険は建物の損害から事業を守る重要な保険です。
しかし、基本的な火災保険だけでは十分な補償が得られない場合もあるため、加入前にしっかりと内容を理解することが重要です。

火災保険の基本プランで補償されるもの

火災保険の基本プランでは、主に以下の自然災害による建物の損害が補償されます。

• 火災：火災による建物の焼損・損壊
• 落雷：落雷による建物の損壊
• 破裂・爆発：ボイラーやガス設備などの破裂・爆発による建物の損壊
• 風災（台風）: 台風による建物の倒壊・損壊
• 雪災：大雪による建物の倒壊・損壊
• 水災：洪水や高潮による建物の浸水・損壊

駐車場経営の場合、基本プランに加えて「破損・汚損」プランに加入することをおすすめします。

• 駐車場内の壁やフェンスの破損：駐車場利用者や車両による当て逃げやいたずらなどによる破損
• 駐車場設備の破損：精算機やゲート機の破損
• 盗難：精算機内のお金や駐車場設備の盗難

4. 機械保険

機械保険は、駐車場に設置されている機器が故障した場合の修理費用を補償する保険です。
駐車場運営においては、精算機、ゲート機、監視カメラなど、様々な機器が稼働しています。
これらの機器が故障した場合、駐車場の利用者にご迷惑をおかけするだけでなく、修理費用も大きな負担となります。

機械保険で補償されるもの

• 機械設備の故障による修理費用
  精算機、ゲート機、監視カメラなど、駐車場に設置されている機械設備が故障した場合の修理費用
• 突発的な事故による修理費用
  落雷や停電など、突発的な事故によって機械設備が破損した場合の修理費用

機械保険で補償されないもの

• 盗難被害：機械設備が盗難された場合の修理・再調達費用
• 精算機内の現金：精算機内の現金が盗難された場合
• 故意による損害：故意に機械設備を破損した場合
• 経年劣化による損害：機械設備の経年劣化による故障

保険適用の事例

駐車場経営において、保険はリスクを軽減し、事業を安定的に運営するために欠かせない存在です。
しかし、いざという時に本当に役立つか不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、施設賠償責任保険、動産総合保険、火災保険それぞれの実際の保険適用事例をご紹介します。

1. 施設賠償責任保険：駐車場看板落下事故

事例

駐車場に設置されていた看板が強風によって落下し、隣の敷地のフェンスを破損させてしまいました。
調査の結果、看板と柱を支えていた留め具にゆるみがあったことが原因と判明し、フェンスの修理費用として50万円を請求されました。

結果

幸い、駐車場経営者は施設賠償責任保険に加入しており、50万円の修理費用は保険金で支払われました。
さらに、落下した看板の再購入費用も保険金で賄うことができたため、大きな出費を回避することができました。

教訓

駐車場設備は風雨や経年劣化の影響を受けやすく、思わぬ事故に繋がる可能性があります。
施設賠償責任保険は、利用者や周辺住民への損害賠償責任を補償し、経営者の負担を軽減する重要な保険です。

2. 動産総合保険：精算機破損・現金盗難

事例

ある日、利用者から「精算機が壊れていて精算できない」との連絡がありました。
現場に急行したところ、精算機はバールのようなものでこじ開けられた形跡があり、現金もなくなっていました。
警察へ被害届を提出しましたが、犯人は見つからず、自費で対応すると数百万円もの出費になると言われました。

結果

しかし、幸いにも駐車場経営者は動産総合保険に加入していたため、迅速に保険会社へ連絡し、被害状況を報告しました。
保険会社による調査の結果、精算機修理費用と盗まれた現金の両方が保険金で補償されることが判明。
数週間後、保険金が支払われ、駐車場経営者は大きな経済的損失を回避することができました。

教訓

駐車場は盗難被害のリスクも高く、精算機など高額な設備が被害対象となる可能性があります。
動産総合保険は、盗難被害や設備破損など、様々なリスクを補償し、事業継続を支える重要な保険です。

3. 火災保険：駐車場壁面の擦り傷

事例

マンションの1階部分で運営している駐車場の壁に車で擦ったような傷を発見しました。
駐車場の利用者が車で擦ったのだと思いますが、本人が名乗り出ることはなく、誰が傷つけたのかは分かりません。

結果

火災保険に加入していたため、保険会社に問い合わせたところ、壁の塗り直し費用を全額補償してもらえました。

教訓

駐車場は、利用者による車両の接触事故など、思わぬ損害が発生する可能性があります。
火災保険は、火災だけでなく、風災や雪災、衝突や破損など、様々な原因による建物の損害を補償し、駐車場経営の財産を守る重要な保険です。

まとめ

駐車場経営は、安定的な収益源として魅力的な事業ですが、同時に様々なリスクも伴います。
施設の老朽化、利用者による事故、盗難被害など、予期せぬトラブルは事業の存続を脅かす可能性すらあります。

そんなリスクを軽減し、駐車場経営を成功に導くための重要なツールが保険です。
施設賠償責任保険、動産総合保険、火災保険など、それぞれの役割を理解し、自分に合った保険を選ぶことで、万が一の備えをしっかりすることができます。

本記事では、駐車場経営における代表的なリスクと、それらを補償する保険について詳しく解説しました。
実際の保険適用事例もご紹介することで、より具体的なイメージを掴んでいただけたと思います。

駐車場経営は、リスクとリターンのバランスが重要です。
リスクを適切に管理し、万が一の事態にも備えることで、安心して事業を運営することができます。